IGS通信

国際シンポジウム「科学と工学を目指す女性へ」

 2016年1月18日(月)、お茶の水女子大学にて、ジェンダー研究所主催による国際シンポジウム「科学と工学を目指す女性へ」が開催された。本シンポジウムは、本学ジェンダー研究所特別招聘教授アン・ウォルソール氏と石井クンツ昌子ジェンダー研究所長が企画立案を担当した。基調講演には、カリフォルニア大学アーバイン校のキャロル・セロン教授をお招きし、パネリストとして、本学の鷹野景子理学部化学科教授、加藤美砂子理学部生物学科教授にご登壇いただいた。
キャロル・セロン氏の基調講演タイトルは、「固執は文化:職業的ソーシャライゼーションと性差別の再生産」。アメリカの大学の工学系学生を対象とした調査から、工学の分野における男性中心の文化が、男女の学生が専門家となるソーシャライゼーションのプロセスにいかに影響しているかを明らかにした。大学入学時、学生は、男女とも同じスタート地点に立っているが、実習や知識の習得、インターンシップなどの過程で、女性は男性支配的な理工系職業における性差別の影響を受け、排除されたり、補助的役割など不利な立場へと追いやられる。そのため、自身の職業的適性についての自信を喪失したり、理工系の職業に魅力を感じられなくなり、結果的に、理工系専門職領域の外へと押し出されるという傾向がみられる。職業的ソーシャライゼーションが性差別の再生産の原因になっている、ということである。
続いて加藤美砂子氏が「理系学会における女性比率」のタイトルで、男女共同参画学協会連絡会による「連絡会加盟学協会における女性比率に関する調査」の結果に基づき、日本の理系各分野における女性の進出について発表した。理系学会を、建築系、情報・工学系(工学系と呼ぶ)、数学・物理・化学・地学系(理学系と呼ぶ)、生物・医薬・農学系(生物系と呼ぶ)、複合領域の5つに分類し、各分野の女性比率を比較すると、2%から24%の開きがある。女性比率が高いのは、生物系の学会であり、工学系は低い。ただし建築系は、大きなくくりでみれば工学系だが、例外的に女性比率が高い。また、近年の変化として、多くの学会で女性比率の増加がみられると報告した。
鷹野景子氏は、「進路選択における母親の意識の影響に関する調査研究の紹介」と題し、お茶の水女子大学の卒業生を対象とした調査の結果を発表した。鷹野氏によると、子どもの理系への進学に賛成か否かは、子どもの性別による差はないが、進学する学部についての意見や、理系への進学が良いと思う理由に、明らかな違いがある。母親が女子に対して進学を望むのは、1位薬学部、2位医学部、3位理学部であるが、男子に望むのは、1位工学部、2位理学部、3位医学部であった。また理系への進学が良いと思う理由では、「資格や免許が取れる」「仕事と家庭の両立」の比率が、女子については高かった。また、母親が理系だと、子どもが理系に進学することを肯定的に捉える傾向があり、子どもの実際の進学先も、理系の学部が多い、といった報告がなされた。
その後のディスカッションでは、聴衆も交えて、科学・工学分野の女性比率を高めたり、女性に不利に働くソーシャライゼーションのあり方を改善するにはどうしたらよいかといった点に焦点をあてた質疑応答が行われた。悪天候という条件もあってか参加人数は少なかったが、この問題に深い興味を持つ方が集まり、活発な討論となった。

《開催詳細》
【日時】2016年1月18日(月)18:10~20:20
【会場】お茶の水女子大学本館306号室
【基調講演】
キャロル・セロン(カリフォルニア大学アーバイン校教授)
「固執は文化:職業的ソーシャライゼーションと性差別の再生産」
【パネリスト】
加藤美砂子(お茶の水女子大学教授) 「理系学会における女性比率」
鷹野景子(お茶の水女子大学教授) 「進路選択における母親の意識の影響に関する調査研究の紹介」
【司会】アン・ウォルソール(IGS特別招聘教授)
【開会・閉会の辞】石井クンツ昌子(IGS所長)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究所
【共催】お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所
【参加者数】19名

 OLYMPUS DIGITAL CAMERAキャロル・セロン氏

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アン・ウォルソール氏

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加藤美砂子氏

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鷹野景子氏

 

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《 2016/3/31掲載 》