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国際シンポジウム「グローバル女性リーダーシップ:アジアからの提言」

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2022.02.18 国際シンポジウム(ジェンダー研究所・グローバルリーダーシップ研究所共同)「グローバル女性リーダーシップ:アジアからの提言」

2022年2月18日(金)、お茶の水女子大学グローバル女性リーダー育成研究機構主催によるオンライン国際シンポジウム「グローバル女性リーダーシップ:アジアからの提言」が開催された。《第1部 実践編:決断し、行動する》、《第2部 成果編:探求し、発信する》《第3部 研究編:見極め、捉え直す》というプログラム構成であり、第2部では、グローバルリーダーシップ研究所(IGL)とジェンダー研究所(IGS)の2015年以降の事業内容とその成果の報告がなされた。

2015年度からのIGSの事業活動は、日本におけるジェンダー研究の国際的研究拠点として、高水準の研究プロジェクトの実施と、国際的な研究ネットワークの構築を推進することが主眼とされている。第2部におけるIGSの報告では、IGSにおける国際的研究拠点としての事業活動の基礎には、その前身組織が創立された1975年以来の拠点形成活動と研究ネットワーク構築があることが示された。特に戸谷陽子IGS所長による報告「ジェンダー研究所:歴史・教育・研究・ネットワーク」では、シンポジウム等のイベント開催、海外からの研究者招聘、教育プロジェクト、学術発信、文献収集といった事業活動全体が、所属研究者による研究活動を基盤に連動・連結していることが説明された。

申琪榮IGS教授による発表「『ジェンダー研究』」では、申教授が編集長を務める『ジェンダー研究』が、紀要から学術誌に形態および編集方針が変更され、世界中の研究者が質の高い先端研究の成果を投稿する雑誌になることを目指していることが報告された。仙波由加里IGS特任講師による報告「国際共同プロジェクト:INTPARTプロジェクト」では、ノルウェー科学技術大学(NTNU)ジェンダー研究センターとの共同プロジェクトの内容と、仙波氏が同プロジェクト内で実施した生殖医療に関する国際比較研究成果が報告された。平野恵子IGS特任講師「IGS-AIT交流事業:AITワークショップ」では、2001年度に開始されたアジア工科大学院大学(AIT)との大学院生の交換研修プロジェクトが、以来20年かけて培ってきた成果が報告された。

IGLが2015年度から展開してきたリーダーシップ研究とその成果発信、本学におけるリーダーシップ教育、そして女性リーダーシップ研究の国際的なネットワーク構築の活動は、「女性」「アジア」「グローバル」という視点からのリーダーシップ研究の進展を図るものである。リーダーシップ研究の分野では、現代のリーダーシップについての分析研究がなされているが、それはまだ、世界的に必要とされている女性リーダーの増加には必ずしも結びついていない。また、リーダーシップ研究の多くは欧米発であることから、アジア文化圏においても同じ理論があてはるとは限らず、よりグローバルな研究の展開そしてその成果の発信が必要とされている。

第2部におけるIGLの報告「私たちは収斂しない:グローバルリーダーシップの冒険」(小林誠IGL所長)、「「女性リーダー」を取り巻く状況:2つの調査データから見えてくること」(岡村利恵IGL特任講師)、「リーダーシップ育成プログラムの開発・実践と教育効果検証指標の開発・活用」では、前述のリーダーシップ研究や国際的研究ワーク構築の成果報告と合わせて、大学におけるリーダーシップ教育の重要性が指摘された。

第3部では、IGLとIGSの特別招聘教授と連携研究者を基調講演者およびパネリストとして招き、現代のグローバル社会における女性のリーダーシップについてジェンダー研究の視点から議論した。リーダーシップという文脈におけるジェンダーは、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数が示す、国会議員や企業の役員の男女比率だけではない。第2部の岡村氏の報告でも指摘されたように、リーダーシップに性別はないはずであるが、旧来型の権力による支配や管理に重きを置くリーダーシップは時に男性型や男性中心的と呼ばれ、女性リーダーに新しく特別なものを求める考え方も存在する。

趙成南IGL特別招聘教授の基調講演「ポストパンデミック時代の新しいパラダイムとしてのアジアにおける女性リーダーシップモデル」、日下部京子AIT教授の基調講演「女性リーダーの育成:お茶の水女子大学とアジア工科大学院大学の交流プログラムが示す可能性」では、これからの時代に必要とされるリーダーシップの形の提案もなされた。また、ディスカッサントのコリーナ・リアントプトラIGS特別招聘教授、グロ・クリステンセンNTNU教授、カレン・シャイア デュースブルグ・エッセン大学教授、ジャン・バーズレイ ノースカロライナ大学チャペルヒル校名誉教授からは、ジェンダー規範を含む文化、政治、経済といった社会的要素に広く目を向けたコメントが出された。リーダーシップとジェンダーについては、さらなる議論の多角化と深化が期待される。

第1部の本田桂子 元世界銀行グループ機関長官の講演「人生三毛作のすすめ」および山崎直子 宇宙飛行士のビデオメッセージも含め、当日の講演および議論の詳細については、刊行予定の本シンポジウム報告書でお読みいただきたい。

記録担当:吉原公美(お茶の水女子大学リサーチ・アドミニストレーター)

《イベント詳細》
国際シンポジウム(ジェンダー研究所・グローバルリーダーシップ研究所共同)「グローバル女性リーダーシップ:アジアからの提言」

【日時】2022年2月18日(金)13:30~19:00
【会場】オンライン開催(Zoomウェビナー)

《第1部 実践編:決断し、行動する》
[本学および附属学校園卒の女性リーダーたちによる講演会]

【講演】
本田桂子(コロンビア大学Adjunct Professor、元世界銀行グループ多数国間投資保証機関長官CEO)[お茶の水女子大学卒業生]
「人生三毛作のすすめ」
【ビデオメッセージ】
山崎直子(宇宙飛行士)[お茶の水女子大学附属高等学校卒業生]
【第1部司会】宝月理恵(IGL特任講師)


《第2部 成果編:探究し、発信する》
[2015年度からのグローバル女性リーダー育成研究機構(IGL・IGS)の成果報告]

【第2部趣旨説明】
石井クンツ昌子(グローバル女性リーダー育成研究機構長)
【報告:IGL】
小林誠(IGL所長)「私たちは収斂しない:グローバル女性リーダーシップの冒険」
岡村利恵(IGL特任講師)「「女性リーダー」を取り巻く状況:2つの調査データから見えてくること」
内藤章江(IGL特任講師)「リーダーシップ育成プログラムの開発・実践と教育効果検証指標の開発・活用」
【報告:IGS】
戸谷陽子(IGS所長)「ジェンダー研究所:歴史・教育・研究・ネットワーク」
申琪榮(IGS教授)「『ジェンダー研究』の学術的成果」
仙波由加里(IGS特任講師)「国際共同プロジェクト:INTPARTプロジェクト」
平野恵子(IGS特任講師)「IGS-AIT交流事業:AITワークショップの7年間の軌跡と成果」
【第2部進行役】本林響子(IGL副所長)


《第3部 研究編:見極め、捉え直す》
[IGL・IGSの特別招聘教授・連携研究者を交えての討論]

【基調講演】
趙成南(韓国・梨花女子大学校名誉教授)[2020~2021年度IGL特別招聘教授]
「ポストパンデミック時代の新しいパラダイムとしてのアジアにおける女性リーダーシップモデル」
日下部京子(タイ・アジア工科大学院大学教授)[IGS連携研究者]
「女性リーダーの育成:お茶の水女子大学とアジア工科大学院大学の交流プログラムが示す可能性」
【ディスカッサント】
コリーナ・リアントプトラ(インドネシア大学准教授)[2021年度IGL特別招聘教授]
グロ・クリステンセン(ノルウェー科学技術大学教授)[IGS連携研究者]
カレン・シャイア(独・デュースブルグ・エッセン大学教授)[2016~2018年度IGL特別招聘教授]
ジャン・バーズレイ(米・ノースカロライナ大学チャペルヒル校名誉教授)[2018~2019年度IGS特別招聘教授]
【第3部司会】石井クンツ昌子


【開会挨拶】佐々木泰子(お茶の水女子大学長)
【閉会挨拶】戸谷陽子
【主催】グローバル女性リーダー育成研究機構 グローバルリーダーシップ研究所 ジェンダー研究所
【言語】日英(同時通訳)
【参加者数】137名