IGSセミナー「日本の国会議員アンケートから見た議員行動とジェンダー」
司会の申琪榮⽒の趣旨説明に続き、第 1 報告者の建林正彦⽒が「議員調査から⾒た⼥性議員の態度と⾏動」と題し、衆議院議員を対象とした早稲⽥/読売議員調査(2009 年 11 ⽉)と全国都道府県議会議員調査(2010 年 2 ⽉〜3 ⽉)の分析に基づく報告を⾏った。
建林⽒によると、⽇本の議会では⼥性議員が少ないため性別の差を量るに⾜る⼗分なサンプル数がなく、加えて、男⼥差を説明する理論も乏しいため、分析に当たり、統計上有意な差を⾒い出しにくい、という困難な点があるという。そこで、建林⽒は、上記の⼆つの調査において、同⼀の設問がなされていることに着眼し、⼆つの調査結果を合算して分析することによって⼗分な数の男⼥議員サンプルを確保した。総計 1309 名(うち男性議員 1192 名、⼥性議員 117 名)の回答を得たのである。
これまでの事例研究では、⼥性議員は超党派的な政策関⼼を共有しており、それが⽴法活動につながったとされている。しかし、党派、当選回数、選挙区の特性など他の属性を考慮すると、どうなのか。建林⽒は、憲法改正、公共事業や福祉事業への予算配分⽐率、輸⼊⾃由化、⼩さい政府か⼤きな政府か、夫婦別姓の導⼊、外国⼈地⽅参政権の導⼊の 6 項⽬についての回答を分析した。その結果、所属政党をコントロールした場合でも、殆どのイシューについて性差が⾒られた。特に夫婦別姓の導⼊と外国⼈参政権の導⼊については、⼥性議員の賛成傾向が明らかだが、国会議員に⽐べ都道府県議員には、反対の傾向が強い。しかし建林⽒によれば、政策指向に性差はあるものの、それは所属政党の政策指向と同じ⽅向であり、党派対⽴の⽅が性差より影響が⼤きいと結論付けた。
次に、濱本真輔⽒が「議員⾏動とジェンダー・キャップ:公認、社会化過程を中⼼に」というタイトルで、⼥性議員には男性議員と⽐べてどのような政策的な違いがあり、政策形成過程にどれほどの影響⼒を持つのかについて報告した。⼥性議員が、⼥性市⺠が望むような政策的帰結に⾄っているのかを分析したものである。分析のデータは、京都⼤学・読売新聞共同議員調査(2016 年10~12月)を⽤いた。公認過程において重要視された点と積極的に参加している政策関連部会における活動を分析した。その結果、1)選挙・⽇常活動においてジェンダー・キャップがあるとは⾔えない、2)選挙制度改⾰、公募制の導⼊を経て、地域代表の側⾯は低下している。また、公認における性別の重要度についてはジェンダー・キャップがある。少なくとも公認を得た女性議員レベルでは、女性という点が公認獲得を後押ししたと認識されている、3)政策活動については党派を踏まえた上でもジェンダー・キャップがある、4)⼥性議員には、⽀持者・⽀持団体・事後調整指向のパターンがやや多い傾向が⾒られたと報告した。
これらの報告をうけて、コメンテーターの三浦まり⽒は、⼥性議員といっても世代や政党別に違いがある点、特に同じ⼥性議員であっても野⽥聖⼦議員、蓮舫議員、⼩宮⼭洋⼦元議員の違いはとても⼤きいと指摘した。また、どのような質問をするかによって男⼥議員の違いが明確になる場合と、それほど差が⾒いだせない場合があるとも指摘した。また、代表性の議論についても、記述的な代表性議論のみならずより踏み込んだ議論が必要であるとした。
《開催詳細》
【日時】2017年9月28日(木)18:00~20:30
【会場】お茶の水女子大学本館135室(カンファレンスルーム)
【司会者】申 琪榮(お茶の水女子大学IGS)
【報告者】建林正彦(京都大学)、濱本真輔(大阪大学)
【コメンテーター】三浦まり(上智大学)
【主催】ジェンダー研究所
【参加者数】39名