第7回IGSセミナー:アン・ウォルソール特別招聘教授講義
「いい兄貴-わるい弟:gender dynamics in an early modern family」
アン・ウォルソール氏 |
石井クンツ昌子氏 |
2015年12月16日(水)、アン・ウォルソールIGS特別招聘教授によるIGSセミナー「いい兄貴―わるい弟:gender dynamics in an early modern family」が開催された。ウォルソール先生は、日本の近世史をご専門とされる歴史学者で、現在は、長くお勤めになられたカリフォルニア大学アーバイン校の名誉教授となられている。
講義では、武家社会の家父長制により生み出されている兄弟間格差や、次男以下の男性は成人し一家を構えた後も、父親と長兄の従属的立場から逃れることが出来ない構造について、平田篤胤の息子銕胤とその長男延胤(いい兄貴)、次男銕弥(わるい弟)の関係を、当事者たちが書き残している書簡類から読み解いていく方法により解説がされた。歴史学の方法論に関する言及もあり、西洋の歴史学では、長く、人間の行動は合理的であることを前提に研究が進められてきたが、近年、感情というものに目を向けるようになり、そうした感情面についての理解を深めるためには、手紙などの書簡類を研究することが重要とのことである。
質疑応答では、この延胤・銕弥兄弟のケースは、幕末という時代や、彼らの在所である当時の秋田藩の政治状況、特に秀才の評判が高かった兄と勉強が出来ず武芸を得意とした弟という極端な違いが、この兄弟の関係のありように大きく影響していたのではないかという意見や、長男が全ての権益を相続する構造は近年まで見られる現象であるとの指摘などが出された。参加者には、家族社会学を専門とする方も多く、社会学においても、感情について語りはじめたのはここ20年ほどのことであると、研究分野間の類似性が指摘された。
(記録担当:吉原公美 IGS特任AF)
《開催詳細》
【日時】2015年12月16日(水)14:00~16:00
【会場】お茶の水女子大学本館127号室
【講師】Anne Walthall
(IGS特別招聘教授、カリフォルニア大学アーバイン校名誉教授)
【コーディネーター】石井クンツ昌子
(IGS所長/お茶の水女子大学基幹研究院教授)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究所
【参加者数】17名