IGS通信

セミナー「世論調査において「改憲」は何を意味するか」

IGSセミナー報告「世論調査において「改憲」は何を意味するか」
(東アジアにおけるジェンダーと政治研究プロジェクト②)

『東アジアにおけるジェンダーと政治』研究会は、憲法改正を取り上げるセミナーの第2回として、世論調査に詳しいケネス・盛・マッケルウェイン東京⼤学社会科学研究所准教授をお招きし、「世論調査において「改憲」は何を意味するのか」を主題とする研究会を、2017年6⽉14⽇に開催した。

⽇本国憲法は世界最古の未改正憲法であるが、ここ数年、改正論議が加熱し、メディアでも様々な政党の主張などが取り上げられている。しかし、それとは対照的に、改正に対する世論は⼗分な検証が⾏われていないと、マッケルウェイン⽒は指摘する。

マッケルウェイン⽒は、憲法改正を提案する主体が誰なのかが、どれほど世論に影響するのかを、2017年6⽉に、独⾃のウェブ世論調査実験を⽤いて検証した。

実験は、世論調査対象を⼆つのグループに分けて、⼀つのグループには2012年の⾃⺠党改憲案を「⾃⺠党改正案」として紹介し、もう⼀つのグループには、同じ2012年の⾃⺠党改憲案を「有識者改正案」と紹介した後に、改正の対象になっている個別項⽬について意⾒を聞いた。その後、⼆つのグループの回答を⽐較検討したのである。

実験の結果、「有識者改正案」と紹介されたグループの⽅が、改正案への賛成が全体的に5〜10%程度⾼くなることが分かった。イシュー別にも違いが⾒られ、とりわけ、これまでの改正議論に含まれてこなかった新しいイシュー「環境権とプライバシー権」については、「有識者改正案」に対する賛成が⾼いという結果が得られた。他⽅で、9条や天皇制といった「伝統的な」イシューについては、「⾃⺠党改正案」と紹介されたグループと、「有識者改正案」と紹介されたグループ間に、統計上有意な差は⾒られなかった。これは、誰が提案者であるかと関係なく、すでにイシュー⾃体が「保守的」であると捉えられているからであると、マッケルウェイン⽒は解釈する。

この実験では、憲法改正に対する⼀貫した男⼥差は⾒られなかった。しかし、⼥性は、プライバシー権と緊急事態条項について「有識者改正案」を選好する傾向があり、男性は、知る権利と環境権について「有識者改正案」を選好する傾向が⾒られた。

参加者からは、男⼥差についての質問や、憲法改正に対するメディアの世論調査の設問による回答の差について、活発な議論が⾏われた。

記録担当:申琪榮(IGS准教授)

《イベント詳細》
IGSセミナー「世論調査において「改憲」は何を意味するか」(東アジアにおけるジェンダーと政治研究プロジェクト②)

【⽇時】2017年6⽉14⽇(⽔)17:00〜18:30
【会場】⼈間⽂化創成科学研究科棟408室
【司会】申琪榮(IGS 准教授)
【報告】ケネス・盛・マッケルウェイン(東京⼤学社会科学研究所准教授)
【参加者数】24名