<女性の政治参画を考える院内集会>「台湾はなぜアジアで2番目に女性議員が多いのか?:議席割り当てと候補者クオータ」
黄 長玲氏 |
申 琪榮氏 |
三浦まり氏 |
2015年7月30日に参議院議員会館特別会議室において、<女性の政治参画を考える院内集会>「台湾はなぜアジアで2番目に女性議員が多いのか?:議席割り当てと候補者クオータ」が開催された。司会は三浦まり氏が務め、基調講演に黄長玲氏を迎えた。
今日、台湾の国会に当たる立法院での女性議員の割合は33.6%を占める。黄氏は東アジアの中でも、台湾における女性の国会議員の割合が突出している背景には、ジェンダー・クオータ制度の導入があると指摘した。現在、本制度は台湾の二大政党における党則となっており、最たる特徴として憲法がこれを規定しているという点が挙げられる。本制度が本格的に導入されたのは、1992年の民主制選挙の開始以降である。そして2005年の憲法改正以降、国政選挙では小選挙区制と比例代表制の並列制度が採用されている。この2005年の憲法改正により、全体の議席は225議席から113議席に減らされた。その内訳は小選挙区が73議席、比例代表が34議席、先住民用議席が6議席となった。そして、そのうち比例代表の50%は女性の議席として割り当てられているのである。また、地方選挙では「4分の1クオータ制度」が採用されている。これはある党の獲得議席が4議席以上の場合、最低1議席は女性でなければならないというものである。また、政府の委員会では「性別中立クオータ制度」が採用されている。これは男女を問わず議席数の少ない性別へこれを適応するシステムである。最後に、黄氏は今日話題となっている台湾の総統選における女性候補者の選出に触れ、もはや台湾においては女性が重要な政治的ポストに就くことは当然であると結んだ。
講演終了後、申氏からのコメントがなされた。申氏は日本の現状から、台湾から学ぶべき重要な点について指摘した。台湾におけるクオータ制度導入の際、いかなる過程があったのかを知ること、日本においてクオータ制度を導入するための政治的「チャンスの窓口」を掴むこと、そして、その際の女性運動の担う役割や、野党の重要性、さらに制度構築から政治文化を変革していくことの可能性について言及した。
次にフロアとの質疑応答では、国政と地方レベルでのクオータ制度導入の違いや、先住民クオータ議席制度に対しての質問が出された。また議員連盟を代表し、中川正春氏(現衆議院議員)は、日本の国会におけるジェンダー・クオータ制度の推進にこれからも尽力したいと述べた。黄氏は、とかく世間においては女性議員を輩出することの「メリット」が問われがちだが、「男性議員のメリットはなにか」と反問し、クオータ制度は「メリット」のためでなく、ジェンダー平等の実現であるのだと締めくくった。
始終、黄氏の力強く熱意のある語りが印象的であり、登壇者だけでなく聴者からも活発な議論が飛び交う有意義な会であった。
(記録担当:臺丸谷美幸 IGS特任リサーチフェロー)
《開催詳細》
【日時】2015年7月30日(木)15:00~17:00
【会場】参議院会館 特別会議室
【基調講演】黄長玲(国立台湾大学政治学部副教授)
【司会】三浦まり(上智大学法学部教授)
【討論】申琪榮(IGS准教授)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究所、「政治代表におけるジェンダーと多様性」研究会(GDRep)、科学研究費助成事業基盤研究(C)「女性の政治参画:制度的・社会的要因のサーベイ分析」(研究代表三浦まり、課題番号15K03287)
【後援】政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟
【参加者数】59名