IGS通信

2015年度第2回IGSセミナー/第6回「政党行動と政治制度」

2015年度第2回IGSセミナー/第6回「政党行動と政治制度」 Reserved for Whom? : The Electoral Impact of Gender Quotas in Taiwan 誰のための議席割り当てなのか?:台湾の選挙におけるジェンダー・クオータの役割

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黄 長玲氏
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三浦まり氏
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スティール・若希氏、申 琪榮氏
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2015年7月31日に、2015年度第2回IGSセミナー/第6回「政党行動と政治制度」研究会が開催された。黄長玲氏による「誰のための議席割り当てなのか?――台湾の選挙におけるジェンダー・クオータの役割」と題する報告が行われた。司会は申琪榮氏が務めた。
黄氏からは台湾の地方選挙で採用されているクオータ制度の一つである、議席割り当て制度(Reserved Seats)に関する報告がなされた。議論の中心は、議席割り当て制度の詳細と、議席を獲得した女性たちの政治家としての資質に関するものであった。例えばフランスで導入しているパリテは、候補者名簿を男女同数にする制度であるため、パリテの効果で当選した女性がどの男性候補者を代替したのかがわからない。そのため、当選した女性議員とそのため落選した男性議員を直接比較検討することは不可能である。しかし、台湾の地方選挙制度の場合はSNTV-MMD制度(単記非移譲式大選挙区制度)を採用しており、当選者は4名毎に女性となるため、4人目の女性の代わりに落選した男性が存在する。つまり、当選/落選した男性と女性の間で比較検討が可能となるのである。黄氏によれば、直近3回の地方選挙での結果をみると議席割り当てによって選ばれた女性は、落選した男性よりも同等か、それ以上により良い政治家としての資質を持つことが判明した。さらに黄氏は、議席割り当てやクオータ制度による議席の増加は女性の政治参画を促すだけでなく、全体的な政治的競争を高める効果があり、これはクオータ制度に異議を唱える勢力に対しても説得力があると述べた。
討論では、スティール・若希氏と三浦まり氏から、それぞれ黄氏の報告に対する応答がなされた。スティール氏からは、台湾においてSNTV制度が採用された理由とその歴史的背景、無所属の候補者や小規模政党所属の候補者へ台湾の議席割り当て制度が与えるインパクトについてなどについて質問がなされた。三浦氏からは、黄氏が議席を獲得した女性の政治家としての資質を図る際の指標として「教育、社会参画、政治的経験」の三つの要素を挙げた点をさらに掘り下げる質問が出た。三浦氏はまた台湾におけるこのクオータ制度を「議席割り当て」(“Reserved Seats”)と翻訳することの妥当性についての議論を提示した。フロアからの質疑応答では、クオータ/非クオータでの政治家としての資質の差異についてや、クオータ制度による議席獲得者の当選以後の扱いは非クオータ選出者と同等であるのか否か、クオータ制度による議席獲得者の要職への着任状況などについて、様々な質問が出された。会場は熱気に包まれ、さながら大学のゼミのような自由な雰囲気の中で多くの議論が交わされた。

(記録担当:臺丸谷美幸 IGS特任リサーチフェロー)

《開催詳細》
【日時】2015年7月31日(木)15:00~17:00
【会場】お茶の水女子大学 人間文化棟6階大会議室
【講師】黄長玲(国立台湾大学政治学部副教授)
【司会】申琪榮(IGS准教授)
【討論】スティール・若希(東京大学社会科学研究所准教授)、三浦まり(上智大学法学部教授)
【主催】「政治代表におけるジェンダーと多様性」研究会(GDRep)、お茶の水女子大学ジェンダー研究所、科学研究費助成事業基盤研究(C)「女性の政治参画:制度的・社会的要因のサーベイ分析」(研究代表:三浦まり、課題番号15K03287)
【参加者数】13名