Events

2/24 セミナー「宝塚というランドスケープとジェンダー」

2022. 2. 24 IGSセミナー「宝塚というランドスケープとジェンダー:ファンダムの文化的・地理的越境とその可能性

日時:2022年2月24日(木)14:00-16:30
オンライン開催(ZOOM Webinar)

2020年東京オリンピックの閉会式では、濃緑の袴や色鮮やかな着物を身にまとった20人ほどの若い女性たちが「君が代」斉唱を務め、世界の注目を集めた。彼女たち宝塚歌劇団は、女性の演者のみから構成される劇団である。これをとらえた海外メディアは「女性のエンパワーメント」を称え、海外のファンたちも宝塚歌劇団に対する国際的関心が高まったことを喜んだ。

だが、国内の宝塚ファンたちのあいだでは、オリンピック協力に対して批判的な声が大きかった。日本のファンたちは新型コロナウイルス禍のなか、国民の多くが中止を望んだオリンピックに宝塚が参加したことや、演者の健康がリスクにさらされることに対して怒りを示したのだった。オリンピック閉会式をめぐる議論の相違は、宝塚ファンダムの地理的越境において、宝塚歌劇団のイメージに衝突が起きているということを象徴的に示しているといえるだろう。

宝塚歌劇については、女性によって作られた「夢の世界」であり、女性の観客を一時的に男性優位社会の日常的な抑圧から解放させるというユートピア的なイメージの下で語られることも少なくない。しかし「清く正しく美しく」という女性演者のモットーの裏で、宝塚歌劇団が、家父長的な企業構造の下で厳しく管理されているということも事実である。

本セミナーでは、宝塚歌劇団の日本国内および中国語圏のファンコミュニティに焦点を当てながら、こうした相反する表象やイメージをめぐって考察する。また、文化的、地理的に越境する宝塚歌劇のファンダムとその可能性について議論を試みたい。

報告 ルセッタ・カム(香港浸會大学文学院准教授)
「台湾における宝塚歌劇の文化越境的欲望とクィア女性のファンダム」
  ズザンナ・バラニャク平田(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程)
「『夢の世界』を作り出す:関西における宝塚のファン文化を事例に」
ディスカッサント 張瑋容 (チョウ・イヨウ)(同志社女子大学現代社会学部助教)
司会 大橋史恵(お茶の水女子大学ジェンダー研究所)
言語 英語・日本語(同時通訳)
参加申込 要事前申込・登録制、参加無料:ZOOM参加申込フォーム
*当日、セミナー参加の際にはZOOM WebinarにアクセスするためのZOOMアカウントが必要です。

《報告要旨》

「台湾における宝塚歌劇の文化越境的欲望とクィア女性のファンダム」
ルセッタ・カム

台湾において宝塚歌劇は2000年以降に新たなブームを巻き起こした。このことは、ファンダムというものが植民地的遺産とポスト植民地的な現在において引き起こされているということ、そこでは文化の生産と消費が、国民アイデンティティや国境に直接的には結びついていないということを示している。台湾では、ローカルなLGBTQ+/「同志」運動、クィアファンコミュニティ、デジタル技術を通じて新たに資料の蓄積が行われてきた。こうした資料にアクセスできるようになったことで、新世代の宝塚ファンたちは、クィアな読解と欲望を生産し、分節化しようとしている。本発表では、宝塚歌劇のクィアな読解と欲望を促進する台湾の文化的資料に着目し、台湾の新世代のクィアな女性ファンとその活動について紹介する。


「『夢の世界』を作り出す:関西における宝塚のファン文化を事例に」
ズザンナ・バラニャク平田

100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団は、女性ファンを魅了する華やかな演出で知られている。これまでの議論では、男役のクロスジェンダー的なパフォーマンスやその熱烈的なファンが注目され、それらの親密な関係が宝塚歌劇団の商業的な成功をもたらしたと主張されてきた。一方で、宝塚歌劇の現象とそのファン文化について、とりわけ物理的・地理的空間における観劇実践、ファン・ツーリズム、ファンコミュニティの形成について、ローカルな水準において理解しようとする研究はほとんど行われていない。本発表では、日本の宝塚ファンが宝塚歌劇の本拠地である宝塚市をどのように認識しているかをジェンダーの視点から検討する。宝塚ファンの語りを分析することで、彼女たちが宝塚大劇場周辺の空間との個人的な関係や日常的な相互作用をどのように築いているかを探求し、宝塚ファン文化に特有の女性のファンネットワークの形成に果たす役割について考察する。

主催:お茶の水女子大学ジェンダー研究所