IGSセミナー(生殖領域シリーズ)2018年度第2回
『フランスにおけるLGBTと生殖医療、および性別の表記変更』
2018年11月16日(金)、大阪大学の小門穂氏を招いて、2018年度第二回目の(生殖領域シリーズ)IGSセミナーを開催し、このセミナーで小門氏は、「フランスにおけるLGBTと生殖医療、および性別の表記変更」と題して報告した。日本で子どもを持つために生殖医療を利用できるのは、ヘテロセクシャルカップルに限定されているが、フランスでも同様に、公衆衛生法典第L.2141-2条で、独身者や同性カップルの提供精子、提供卵子、提供胚の利用は禁止されている。しかし、同性のカップルやトランスジェンダーの人々による生殖医療への需要は増えつつあり、小門氏はフランスのLGBTの人々の生殖医療の利用と性別の変更に関する最近の動向について紹介した。
フランスでは代理出産は禁止されているが、ヘテロセクシャルカップルは提供精子、提供卵子、提供胚を利用できる。2013年にフランスでは同性婚法が成立したが、シングル男性や男性カップルは、代理出産を利用しないと子どもを持つことができないため、生殖医療の利用は実質不可能である。一方、シングル女性や女性カップルは、自分で子どもを産めるため、提供精子や提供卵子を得られれば子どもを持つことが可能であり、男性カップルからすべてのカップル間の不平等の主張があるものの、レズビアンカップルやシングル女性の生殖医療の利用についてはたびたび検討されてきた。これまでも、提供精子を求めて、国外に行くレズビアンカップルもいたが、2018年、国務院によりレズビアンカップルやシングル女性の提供精子や提供卵子を利用した生殖医療も認めようという案が浮上している。
また、トランスジェンダーやインターセックスの人々の中には性別表記の変更を求める人もいるが、特に男性として出生しながらも、男性でも女性でもないと自認している人が、「中性」の表記をめぐっておこした裁判では、性の新たなカテゴリー創出は立法者に委ねるという妥当な判決がだされた。
小門氏の報告のあとに、フロアーからも活発な意見等が出され、日本のセクシャルマイノリティーの生殖医療の利用を考える上でも、非常に刺激になるセミナーであった。
記録担当:仙波由加里(ジェンダー研究所特任リサーチフェロー)
《開催詳細》
【日時】2018年11月16日(金)18:30~20:30
【会場】お茶の水女子大学 本館126室
【報告者】
小門穂(大阪大学大学院 医学系研究科 医の倫理と公共政策学教室)
報告タイトル:「フランスにおけるLGBTと生殖医療、および性別の表記変更」
【ファシリテータ】仙波由加里(お茶の水女子大学 ジェンダー研究所)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究所
【参加人数】39名
【開催案内】http://www2.igs.ocha.ac.jp/events2018/#11162_LGBT